前払式支払手段発行業と資金移動業について
この記事は Kyash Advent Calendar 2020 13日目の記事です。
Kyashで経理・会計周りの作業をするエンジニア&サーバーサイドエンジニアのあおきつねです。
前置き
自己紹介的なものは、こちらになります。
こちらのリンクにあるように、私はKyashで経理系のエンジニアとして、資金移動業と前払式支払手段発行業としての経理周りの仕事をメインでやっています。
今回は、Kyash社がサービスを行うための前払式支払手段発行業と資金移動業について、お話をしたいと思います。
資金移動業を始めた意義などについては、弊社PdMのaraiの記事を見てください。
前払式支払手段発行業でできる事
前払式支払手段発行業はプリペイドでの残高を発行し、サービスの利用者は、発行した残高で商品を購入できます。
2020年9月からKyashは、資金移動業でのサービスも提供するようになったのですが、それ以前は前払式支払手段発行業でのサービスを提供していました。
資金移動業でできる事
資金移動業はユーザーから現金を預かり、サービスの利用者は、預けたお金で、商品の購入・送金・銀行口座へのお金を出すという事ができます。*1
内容だけ見ると、資金移動業は良いこと尽くめなのですが、資金移動業には以下の事が必要となります(細かいところだとたくさんあると思うのですが、大きなところではこちら)。
- 犯罪収益移転防止法を遵守しなければならない
- 法務局に供託を行わなければならない
犯罪収益移転防止法を遵守しなければならない
資金移動業は、前払式支払手段発行業と違い、「現金」を取り扱い、銀行口座へお金を出したりします。
そのため、前払式支払手段発行業より厳重なセキュリティが必要です。
資金移動業のサービスを受けるユーザーは、KYC等の身分確認を行う必要があります。
資金移動業者は、マネーロンダリング対策やテロ資金供与を防止するための体制作りをする必要があります。この準備に、資金移動業を始めた企業は多くの時間を費やしたと思います。
法務局に供託を行わなければならない
前払式支払手段発行業は、ユーザーへの残高発行額(未使用残高と言います)の約50%の金額を、法務局に供託します。
資金移動業は、ユーザーから預かっているお金(未達債務と言います)の約100%の金額を、法務局に供託します。
法務局への供託の目的は、会社が経営破綻した時にユーザーに預かったお金を返すために使います。
ユーザーは、資金移動業の会社が経営破綻したとしても、自分の預けたお金は返してもらえます。
供託を行う頻度にも違いがあります。
前払式支払手段発行業の未使用残高は、半年に一回(3月/9月)算出し直す必要があり、算出から2ヶ月以内に供託所にお金を預け直す必要があります。
資金移動業者の未達債務は、できるだけリアルタイムに監視する事を求められ、かつ、毎週一回算出し直す必要があり、算出から1週間以内に供託所にお金を預け直す必要があります。*2
Kyashサービスの利用と資金移動業について
現在Kyashのユーザーは、大きく2タイプに分かれます。
- 前払式支払手段発行業のサービスのみ利用するユーザー
- 前払式支払手段発行業と資金移動業のサービスを両方利用できるユーザー
上記の説明にもありましたように、資金移動業のサービスも受けられるようになるためには、「身分確認(KYC)」が必要で、加えて「規約への同意」をしていただく必要があります。
条件が揃わないとユーザーは、資金移動業のサービス(銀行口座へお金を出す等)の利用ができません。
Kyash残高と資金移動業について
Kyashでは2種類の残高があります。
- 決済のみに利用できる残高(前払式支払手段発行業として管理しているもの)
- 決済、送金、出金に利用できる残高(資金移動業として管理しているもの)
クレジットカードからの入金は、出金できる残高でお金を預かってしまうと、クレジットカードショッピング枠の現金化というクレジットカードの利用規約等に違反するために、常に前払式支払手段発行業としての残高利用となります。
最後に
ここまで小難しい記事を読んでいただき、ありがとうございました。
最後に、
Kyash社は、資金移動業として、ユーザーの皆様からお金を預かっております。
預けたお金は大丈夫なのか?と不安になる方もいらっしゃると思いますが、上記に説明させていただきました通り、法務局への供託を行っております。
万が一Kyash社に何かあったとしても、自分の預けたお金は返してもらえますので、安心してご利用ください。
明日の Kyash Advent Calendar 2020 は、Kyash社iOSエンジニアのtamadon氏です。