Kyashに入社して1.5年経過したので振り返ってみる
前置き
2020年3月1日に入社し、約1.5年経過しました。
結構いろいろなことがあったなぁと思い、振り返ってみようと思います。
入社直後(入社1ヶ月)
出来事
- 資金移動業説明のためのLTをやった(2週間で2回やった)
- 銀行からの入金やKyash残高の出金といった機能のリリースに備えて、当時のKyashアプリ残高をどういう整理にすれば資金決済法上の問題にならないかをホワイトボードに書いて考えていた
- リモートワーク用の作業部屋を自分の家に作成した
当時考えていたこと
自分は資金移動業にそこそこ詳しいエンジニアとしてKyashに入社したので、その部分でプロダクト開発で役に立ちたいという考えを強く持っていました。
なので、自分の知っている資金移動業の知識、そしてそれがKyash社のプロダクト開発だとどの辺りに影響してくるのか等々を周囲に伝え、仕様周りのコメントや相談、指摘をしていました。そのため、資金移動業周りで大きな問題を出すことなく、リリースを迎えることができて、本当に良かったです。
入社半年くらい(2020年9月くらい)
出来事
- 資金移動業の登録(リンク)を行い、銀行の入出金機能をリリースしました
- 併せて、銀行口座からの入金・Kyash残高(Kyashマネー)の銀行口座への出金をリリースしました。
- All Hands委員会(リンク)の運営メンバーになりました。
- Princeチーム(Princeチームとは)にメンバーが増えました。
当時考えていたこと
資金移動業のリリースのための、Kyash残高部分の仕様決めサポートを行っていて、Kyashアプリ内で取り扱っているお金のすべてにおいて「資金移動業的にはどのようなお金として取り扱うべきか」をホワイトボードに向かいながらずっと考えていました。
当初仕様整理の基本的な考え方を開発チーム内で展開して説明をしたのですが、リリース前から現在に至るまで、その時の考え方は今でも問題ない状態でやってこれていて嬉しいです。
プロダクト開発以外の出来事としては、社内でAll Handsという全社会議があるのですが、そちらの運営メンバーに推薦していただいたので、参加することにしました。
前職でもAll Handsはあり、そこでのAll Handsは業務連絡会としては良かったのですが、イベントとしてはそんなに楽しいものではなかったという個人的な印象がありました。
そこで「全社会議をもっと楽しいものにしよう」と自分の目標をたてて、コンテンツの内容を見直したりしました(今もしています)。
あとチームメンバーが一人増えたこともあり、作業のやり方やコミュニケーションのとり方をどのようにしたら良いのかを考えていた時期でもあります。
結局の所、一番時間がかかったのは、経理・会計の社内知識と資金移動業の知識を教えることでした。
チームメンバーはエンジニアなので、技術的な話はある程度通じるものの、経理・会計や資金移動業の知識は知らないエンジニアが多いからです。
入社1年くらい(2021年3月くらい)
出来事
- IT監査・会計監査が完了しました
- All Hands委員会の運営メンバーを続けています
- Google MeetからZoomがメインになった
- Google App Scriptで出力していた資金移動業の帳簿関連をGoogle Cloud Composerに移行した
- プロダクトでリリースするサービスで、資金移動業のとして法的リスクがないか等の相談を受けるようになった(詳細なチェックはリーガルチームがしています)
当時考えていたこと
会計監査のためにシステム側の金額の算出を行って、経理・会計側の帳簿などと付き合わせていく作業がなんといっても大変だなぁ、と考えていました。
金額の算出方法について勘違いがあったもの(大きな問題等があったわけではないです)や、新しいサービス分が計上されていないため数字が合わないなどなどなどなど(たくさんあったんです)。
苦労しただけあって、本番のIT監査・会計監査のタイミングでは大きなトラブルはなく終えることができました。
いくつかの経理項目で金額の誤差を極小にすることができたもの(ものによっては、誤差が0円という項目も)があり、その部分は通常のシステム開発では得られない満足感を得ることができました。
縁があってAll Hands委員会の運営を続けていて、この辺りのタイミングでは、経営陣の方になるべく多く話す機会を設けてもらうことで、通常の社員との距離感を無くすことをずっと考えていた時期でした。
自分としては「フランクになりすぎて、パリッとした全社会議感がなくなる」ことと「パリッとしすぎて全社会議が業務連絡会っぽくなる」ことを、どちらを選択するのが良いのだろうかと思ってました。
結果、「つまらない全社会議に意味はないだろう。フランクで楽しい全社会議にして、必要なところはパリッとするように努力する」方が良いだろうと自分の中では結論づけて、今も運営を続けています。
全社の動きとしては、社内のコミュニケーションツールのスタンダードがZoomになりました。
自分はZoomをずっと使いたいと言っていたので、使えるようになってうれしかったのをよく覚えています。
チームでの動きとしては、「チーム内で技術的なチャレンジをしたいよね」と考えていて、自分で作ったGoogle App Script(以後、GAS)で作った資金移動業の帳簿作成プログラムはちょっとダサいよねと感じてました。
そこでチーム内で、Google Cloud Composerを使って帳簿出力することができそうだし、GASと違いジョブの実行順番を管理できたり、GASと違いソースコード管理がしやすかったりと、良さそうだから使ってみたいということになり、Google Cloud Composer上で、資金移動業の帳簿作成プログラムが動くようにPythonを使い、改修しました(まあ、ほとんどは増えてチームメンバーの方がやってくれちゃったわけですが)
また、プロダクト開発プロセスの早い段階で、経理・会計・資金移動業的な視点でのチェックや意見が言えるような環境作りをしないとということも考えていました。
自分の見ている範囲では、経理・会計で苦労する理由が「どんな機能をなんのために作成するのか」が、経理・会計チームに伝わっていないことが多くだろうと推測できたからです。
他にも資金移動業関連でのコメントをすることも必要だと思っておりました。資金移動業に則っていない仕様を作り込んでしまうと、リリース直前で大きな仕様変更を求められてしまうことが多いからです。
そのために、少しでも関係のありそうな会議には出て、経理・会計・資金移動業的なコメントをすることで、その辺りの話が出たときに、自分のチームに軽く声をかけてもらえる土壌づくりをしました。
おかげさまで、今ではほんの少しでも関係がありそうな場合には連絡がすぐ来るようになりました。
入社1.5年くらい(2021年9月くらい)
出来事
- All Hands委員会の運営メンバーを続けています
- 外部への資金移動業関連の資料の更新や作成をするようになった
今、考えていること
チーム作業としてはだいぶ安定してきました。
新しいプロダクトの開発が始まれば、会議にメンバーとして呼ばれ、経理・会計・資金移動業的には問題ないか?などの大枠の初期の相談をいただけるようになりました。
その辺りをプロダクトのリリースまでに経理・会計チームと話をして、どのように集計をすれば問題なさそうか、ということを決めて、運用まで持っていけるようになりました。
資金移動業的な話としても、初期の仕様決めの段階で、リーガルチームに確認する必要のある部分などをある程度スムーズに相談できるようになれたと思います。
All Handsの運営メンバーをまだ続けています。
All Handsそのものは形になってきているかな、と自分では思っていて、自分は社内でのコミュニケーションや連携を取るためのイベントや理解(どのメンバーがどんな仕事をしているのかを目に見える形にする)を深める活動をしていきたいな、とぼんやり考えています。
これは自分には重責だと考えているのですが、金融庁向けの資金移動業関連のドキュメントのたたき台を作成したり、レビューをしたりするようになりました。
社内の資金移動業関連のシステムと法律の絡んでいるところは確かに自分がコメントをしていることが多いので、実績を認めていただけたから任せていただけているのだろうと思い、ドキュメント作成をしております。
最後に
資金移動業の開始から会計監査が終わりまでの期間が本当に忙しかった、かつ、充実しておりました。
今は、「やらなければならないこと」で充実感を得るのではなく、「自分でやりたいことをやって」充実感を得たいと思っております。
そのためのチーム目標とチーム作業のやり方をうまいことやって、楽しくやっていきたい!ってところなのですが、そう簡単に行くわけもなく、「うーん。どうしたもんかなぁ」と試行錯誤しながら、毎日自由に楽しくやらせてもらってます!
長文となってしまいましたが、読んでいただき、ありがとうございました!
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Kyashでは、エンジニアやデザイナー、プロダクトマネージャーなど色々募集中です。
カジュアル面談も転職の意思を問わず歓迎しますのでお気軽にお申し込みください。
前払式支払手段発行業と資金移動業について
この記事は Kyash Advent Calendar 2020 13日目の記事です。
Kyashで経理・会計周りの作業をするエンジニア&サーバーサイドエンジニアのあおきつねです。
前置き
自己紹介的なものは、こちらになります。
こちらのリンクにあるように、私はKyashで経理系のエンジニアとして、資金移動業と前払式支払手段発行業としての経理周りの仕事をメインでやっています。
今回は、Kyash社がサービスを行うための前払式支払手段発行業と資金移動業について、お話をしたいと思います。
資金移動業を始めた意義などについては、弊社PdMのaraiの記事を見てください。
前払式支払手段発行業でできる事
前払式支払手段発行業はプリペイドでの残高を発行し、サービスの利用者は、発行した残高で商品を購入できます。
2020年9月からKyashは、資金移動業でのサービスも提供するようになったのですが、それ以前は前払式支払手段発行業でのサービスを提供していました。
資金移動業でできる事
資金移動業はユーザーから現金を預かり、サービスの利用者は、預けたお金で、商品の購入・送金・銀行口座へのお金を出すという事ができます。*1
内容だけ見ると、資金移動業は良いこと尽くめなのですが、資金移動業には以下の事が必要となります(細かいところだとたくさんあると思うのですが、大きなところではこちら)。
- 犯罪収益移転防止法を遵守しなければならない
- 法務局に供託を行わなければならない
犯罪収益移転防止法を遵守しなければならない
資金移動業は、前払式支払手段発行業と違い、「現金」を取り扱い、銀行口座へお金を出したりします。
そのため、前払式支払手段発行業より厳重なセキュリティが必要です。
資金移動業のサービスを受けるユーザーは、KYC等の身分確認を行う必要があります。
資金移動業者は、マネーロンダリング対策やテロ資金供与を防止するための体制作りをする必要があります。この準備に、資金移動業を始めた企業は多くの時間を費やしたと思います。
法務局に供託を行わなければならない
前払式支払手段発行業は、ユーザーへの残高発行額(未使用残高と言います)の約50%の金額を、法務局に供託します。
資金移動業は、ユーザーから預かっているお金(未達債務と言います)の約100%の金額を、法務局に供託します。
法務局への供託の目的は、会社が経営破綻した時にユーザーに預かったお金を返すために使います。
ユーザーは、資金移動業の会社が経営破綻したとしても、自分の預けたお金は返してもらえます。
供託を行う頻度にも違いがあります。
前払式支払手段発行業の未使用残高は、半年に一回(3月/9月)算出し直す必要があり、算出から2ヶ月以内に供託所にお金を預け直す必要があります。
資金移動業者の未達債務は、できるだけリアルタイムに監視する事を求められ、かつ、毎週一回算出し直す必要があり、算出から1週間以内に供託所にお金を預け直す必要があります。*2
Kyashサービスの利用と資金移動業について
現在Kyashのユーザーは、大きく2タイプに分かれます。
- 前払式支払手段発行業のサービスのみ利用するユーザー
- 前払式支払手段発行業と資金移動業のサービスを両方利用できるユーザー
上記の説明にもありましたように、資金移動業のサービスも受けられるようになるためには、「身分確認(KYC)」が必要で、加えて「規約への同意」をしていただく必要があります。
条件が揃わないとユーザーは、資金移動業のサービス(銀行口座へお金を出す等)の利用ができません。
Kyash残高と資金移動業について
Kyashでは2種類の残高があります。
- 決済のみに利用できる残高(前払式支払手段発行業として管理しているもの)
- 決済、送金、出金に利用できる残高(資金移動業として管理しているもの)
クレジットカードからの入金は、出金できる残高でお金を預かってしまうと、クレジットカードショッピング枠の現金化というクレジットカードの利用規約等に違反するために、常に前払式支払手段発行業としての残高利用となります。
最後に
ここまで小難しい記事を読んでいただき、ありがとうございました。
最後に、
Kyash社は、資金移動業として、ユーザーの皆様からお金を預かっております。
預けたお金は大丈夫なのか?と不安になる方もいらっしゃると思いますが、上記に説明させていただきました通り、法務局への供託を行っております。
万が一Kyash社に何かあったとしても、自分の預けたお金は返してもらえますので、安心してご利用ください。
明日の Kyash Advent Calendar 2020 は、Kyash社iOSエンジニアのtamadon氏です。